DX認定制度とは?取得するメリットや申請方法、必要な取り組みを解説
2025.1.10
デジタル化への対応が企業の生き残りを左右する今、注目を集めているのが「DX認定制度」です。経済産業省が推進する本制度は、企業のDX推進の取り組みを評価・認定するものです。しかし、申請方法やメリットについては、まだまだ理解していない企業が多くあるのも事実です。そこで本記事では、DX認定制度の概要から、取得メリット、実際の申請手続きまで、わかりやすく解説します。
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企業のDX推進状況を評価・認定する制度として、さまざまな分野から注目を集めています。ここでは、DX認定制度の概要から制度が誕生した背景などを詳しく説明します。
DX認定制度は、企業のデジタル経営改革を推進・支援する制度です。経済産業省が定めた「デジタルガバナンス・コード」に基づき、企業のDXへの取り組み状況を評価します。なお、認定の対象は「上場」「非上場」を問わず、DXに取り組む意欲のあるすべての企業が対象です。 評価項目には、経営ビジョンの策定や推進体制の整備、デジタル技術の活用計画など、多岐にわたる要素が含まれます。申請企業は、これらの項目について自己診断をおこない、第三者機関による審査を経て認定を受けるのが基本的な流れです。 なお、認定の有効期間は2年間で更新も可能です。DX認定制度は単純な認定認証だけに留まらず、企業のデジタル変革を継続的にサポートする仕組みとして機能しています。
DX認定制度は2020年5月に創設されました。創設の背景には、日本企業のデジタル化の遅れがあり、とくに、新型コロナウイルスの感染拡大により、企業のデジタル対応力の差が業績に直結することが明確化されました。そこで、経済産業省は企業のDX推進を後押しし、国際競争力の強化を図るため、本制度を立ち上げました。 そして、制度開始以来、多くの企業が認定を取得し、デジタル技術を活用した経営改革に取り組んでいます。
企業のデジタル化への取り組みは段階的に評価され、初めにDX推進に向けた戦略立案や体制整備に着手する企業は「DX-Ready以前レベル」に分類されます。この段階では、経営層のDXへの理解や基本的なIT環境の整備が進められています。そして、次の段階として位置づけられるのは「DX認定事業者(DX-Readyレベル)」です。 こちらは、より高度な取り組みを実践している企業を示します。明確なビジョンの策定、全社的な推進戦略の確立、そして実効性のある体制整備が評価ポイントです。具体的には、デジタル技術を活用した業務プロセス改善、データ活用による経営判断の高度化などが実践されています。 さらに上位の段階に位置づけられるのは「DX-Excellentレベル」です。デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの創出や、業界における競争優位性の確立を実現した企業が認定されます。各企業は、これらの段階を目標として、計画的なDX推進が求められます。 DX認定制度は、企業のデジタル化の進展度合いを客観的に示す指標として、重要な役割を果たしています。
DX認定制度の取得は、企業に多くのメリットをもたらします。経営戦略の明確化から、金融機関からの優遇措置まで、ビジネスのさまざまな側面でプラスの効果が期待できるからです。ここでは、DX認定取得で得られる5つのメリットを詳しく解説します。
DX認定制度への申請プロセスは、企業のデジタル化における現状と課題を明確に把握する機会を提供します。申請に向けた自己診断により、経営戦略やIT基盤の整備状況、人材育成の進捗など、多角的な視点から自社のDX推進状況を評価できるからです。 たとえば、多くの企業は自己診断をとおして、データ活用の不十分さやレガシーシステムの存在、デジタル人材の不足といった具体的な課題を発見できるでしょう。また、部門間の連携不足やデジタル戦略の不明確さなど、組織全体に関わる問題点も「見える化」できます。 認定取得に向けた準備プロセスは、経営層から現場まで組織全体でDXの重要性を再認識し、改善に向けた具体的なアクションプランを策定する絶好の機会です。課題の可視化は、効果的なDX推進の第一歩といえます。
DX認定を取得するメリットは、企業価値を大きく向上させられる点です。デジタル技術を活用した経営改革に取り組む姿勢を示すことで、投資家や取引先からの信頼を高められるからです。とくに、ESG投資が注目を集める現代において、デジタル化への対応力は重要な評価指標の一つです。実際にDX認定を取得した企業の多くは、株式市場での評価が向上しています。 デジタル技術を応用した業務効率化や新規事業の創出により、収益性や成長性が高まると期待されるためです。また、優秀な人材の獲得においてもDX認定は大きなアドバンテージといえるでしょう。デジタル時代をリードする企業として認知されることで、デジタルスキルを持つ若手人材からの注目も集まります。 さらに、DX認定は取引先との関係強化にも寄与します。デジタル化が進む取引環境において、DX認定企業は信頼できるパートナーとして選ばれやすい傾向があります。企業価値の向上は、ビジネスチャンスの拡大と持続的な成長をもたらします。
DX認定企業の大きなメリットは、政府系金融機関から低金利での融資を受けられる優遇措置が適用される点です。日本政策金融公庫では、DX認定企業向けの特別融資制度を設けており、基準金利の1.5%よりも低い「0.85%」の金利で借入ができます(利率は2024年7月時点)。例として、クラウドシステムの導入やデータ分析基盤の構築に必要な資金に対して低金利での調達が可能です。 実際に製造業のDX認定企業は、工場のIoT化に必要な設備投資資金を低金利で調達し、デジタル化を加速させました。このように、低金利融資制度は、企業の財務負担を軽減しながらDX推進を支援する有効な手段です。融資の審査においても、DX認定企業は経営のデジタル化に積極的な企業として評価され、円滑な資金調達が期待できます。
DX認定企業のメリットは、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「DX銘柄」への応募資格が得られることです。DX銘柄は、デジタル技術を活用した経営革新に秀でた上場企業を表彰する制度であり、市場からの注目度も高い評価指標です。また、DX銘柄への選定は、企業の成長性や競争力を示す重要な指標として投資家から注目されています。 選定企業は、デジタル時代をリードする企業として認知され、株式市場での評価向上が期待できます。実際に、2023年度のDX銘柄に選定された企業の多くは、選定後に株価が上昇し、企業価値の向上を実現しました。 DX銘柄への応募資格取得は、企業のデジタル化への取り組みを対外的にアピールする絶好の機会です。選定企業には、投資家や取引先からの信頼向上、優秀な人材の確保といった副次的な効果も見込めます。
DX認定制度の申請は、経済産業省が定めた手順に従って進めます。申請から認定までのプロセスは明確に定められており、企業は段階的に準備を進めることで円滑な申請が可能です。申請の第一歩は申請ガイダンスの確認から始まり、その後、認定申請書や申請チェックシートなどの必要書類をダウンロードして準備をおこないます。 そして、申請書類の作成では、自社のDXへの取り組み状況や経営戦略について詳細な記述が求められます。とくに、デジタル技術の活用方針や推進体制、人材育成計画などの項目は重点的な確認ポイントです。 書類準備後は、WEB申請システムを介して電子申請をおこない、審査へと進みます。申請プロセスは複数のステップで構成されていますが、各段階で求められる要件を丁寧に満たしていくことが認定取得への近道です。DX認定制度の詳細については、次の章で解説します。
DX認定制度は年間をとおして、申請を受け付けています。経済産業省は企業のDX推進を継続的に支援するため、柔軟な申請体制を整備しています。申請から認定取得までは通常2か月程度の期間を要するのが一般的です。 審査は毎月実施され、認定結果は翌月初旬に通知されます。ただし、年度末など申請が集中する繁忙期には、通常より審査期間が延びる場合もある点は理解しておきましょう。
DX認定制度の申請費用は無料です。経済産業省は、より多くの企業にDX推進の機会を提供するため、申請に関する費用を徴収していません。ただし、申請準備段階での社内体制整備やコンサルティング費用は企業負担です。なお、申請準備にかかる実質的なコストは、企業規模や現状のDX推進レベルによって大きく異なります。 たとえば、中小企業B社の場合、社内のDX推進体制構築に約300万円の投資をおこないました。一方、大手企業C社は既存の体制を活用し、追加コストを最小限に抑えて認定を取得しました。申請費用の無償化により、企業は予算を実質的なDX推進施策に集中投資でき、効果的な組織変革を推進しています。
DX認定を取得するには、多角的な取り組みが求められます。経済産業省が定める基準に基づき、企業は戦略的なデジタル化推進を実践する必要があるからです。ここでは、DX認定を取得するための取り組みをわかりやすく紹介します。
DX認定を取得するための第一ステップとして、企業全体のデジタル化ビジョンを明確に定めるところから始めます。具体的には、経営層が主導して、全社的なDX推進の方向性を示し、部門横断的な取り組みを推進します。
企業のビジョンと戦略が立案でき次第、既存のITシステムを見直し、デジタル技術を効果的に活用するための基盤を整備します。クラウドサービスの導入やレガシーシステムの刷新など、現代のビジネス環境に適応したIT環境を構築します。
製造現場や営業活動におけるIoT技術の導入を進め、データに基づく業務改善を実現します。センサーやモバイルデバイスを活用し、リアルタイムでの状況把握と迅速な意思決定を可能にします。例として、ある食品製造業の会社では、生産ラインにIoTセンサーを導入し、品質管理の精度を大幅に向上させました。
最後にデータセキュリティや個人情報保護など、適切なガバナンス体制を構築します。社内規定の整備や従業員教育を介して、安全かつ効果的なデジタル活用を実現します。たとえば、金融機関D社は厳格なセキュリティ基準を設けつつ、業務のデジタル化を推進し、顧客満足度の向上を達成しました。 これらの取り組みを総合的に推進することで、企業は着実にDX認定取得への道を歩めます。
本記事では、DX認定制度の概要から申請方法、取得に必要な取り組みまで詳しく解説しました。DX認定制度は企業のデジタル化を後押しする重要な制度であり、税制優遇や低金利融資など、さまざまなメリットが期待できます。企業の持続的な成長のため、DX認定制度の活用を積極的に検討してみましょう。
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