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DX推進指標とは?活用するメリットやDX推進につなげる方法を解説

2025.1.10

DX推進指標とは?活用するメリットやDX推進につなげる方法を解説

企業のDX推進が加速するなか、その取り組みを効果的に評価・推進するツールとして注目を集めているのが「DX推進指標」です。そこで本記事では、DX推進指標の基本的な概念から具体的なメリット、実践的な推進方法まで解説します。





DX推進指標とは?

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進捗状況を定量的に評価・分析するための指標体系です。経済産業省が2019年に公表した本指標は、企業のDX推進における成熟度を客観的に把握し、次のステップへの道筋を示す重要なツールとして機能します。
企業がDXを推進するうえで直面する最大の課題は、自社のデジタル化の現状把握と将来へのロードマップの作成です。DX推進指標は、経営ビジョンからビジネスモデルや組織体制、デジタル技術活用まで、多角的な視点から企業のDX成熟度を評価します。
たとえば、物流業界では、DX推進指標を活用した倉庫管理システムの導入状況や配送ルート最適化の進捗度が評価対象です。IoTセンサーによる在庫管理のレベル、AIを用いた配送ルート最適化システムの活用度などを数値化し、業務プロセスのデジタル化度合いを測定します。
これにより、アナログな作業が多い領域やデジタル化による効率化が見込める業務を特定し、優先的に取り組むべき課題を明確化します。DX推進指標は、企業のデジタル変革を成功に導く羅針盤として、現状分析から目標設定、実行計画の策定まで体系的なDX推進を支援する実践的なフレームワークです。



DX推進指標が提示された背景

経済産業省がDX推進指標を策定した背景には、日本企業のデジタル化の遅れといった深刻な課題がありました。デジタル競争力ランキング2021において、日本は64カ国中28位と低迷し、デジタル技術の活用や組織的な変革の面で大きな課題を抱えていました。
この状況を引き起こした要因として、多くの日本企業がデジタル技術を既存の業務効率化のツールとしてのみ捉え、ビジネスモデルの変革や新たな価値創造につなげられなかった点があげられます。また、経営層のデジタル戦略への理解不足、組織全体でのDXビジョンの共有が不十分であることも変革を妨げる大きな要因といえるでしょう。
さらに、2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は、企業のデジタル化の重要性を一層浮き彫りにしました。そして多くの企業で、テレワークやオンラインコミュニケーションツールといったデジタル対応の遅れにより事業継続が深刻化していきます。
具体例として、製造業では生産現場の遠隔監視システムの未整備により、感染症対策としての人員削減や在宅勤務への移行が困難を極めました。また、小売業においては実店舗中心の従来型ビジネスモデルからECサイトへの展開の遅れが「売上減少」などの形で顕在化します。
経済産業省は、これらの課題に対する実効性のある対策として、企業のDX推進状況を可視化し、具体的な改善の方向性を示すDX推進指標を提示しました。



DX推進指標の構成

DX推進指標は経営視点とITシステム構築の2つの領域から構成され、企業のデジタル変革を包括的に評価する体系です。経営層のコミットメントから実務レベルの取り組みまで、組織全体のDX推進状況を段階的に把握します。経営視点の指標では、ビジョンの策定や戦略の立案、推進体制の整備など、DX推進の土台となる要素が評価対象です。
具体的には、経営トップのリーダーシップ、デジタル戦略の明確化、人材育成の取り組みなどが評価対象に含まれます。一方、ITシステム構築の指標では、デジタル技術の活用基盤や情報システムの整備状況を評価します。なお、各指標は0から5段階のレベルで評価され、組織のDX成熟度を測定します。各レベルの特性は以下のとおりです。

  • ・レベル0:未着手
  • ・レベル1:一部での散発的実施
  • ・レベル2:一部での戦略的実施
  • ・レベル3:全社戦略に基づく部門横断的推進
  • ・レベル4:全社戦略に基づく持続的実施
  • ・レベル5:グローバル市場におけるデジタル企業

DX推進指標は、組織のデジタル変革における現状把握と目標設定の両面で活用され、継続的な改善活動の指針として機能します。



DX推進指標を活用するメリット

DX推進指標を有効活用すれば、組織全体のDX推進状況を客観的に評価し、効果的な改善策の発見が可能です。ここでは、DX推進指標で得られるメリットを4つ紹介します。



組織全体で共通認識が持てる

DX推進指標を活用するメリットのひとつは、経営層から現場の従業員まで、すべての階層が同じ視点でDX推進状況を理解できる点です。なぜならば、共通の評価基準があれば、部門間の認識のずれや解釈の違いを解消し、一貫性のある取り組みが実現できるからです。
具体的な例をあげると、製造部門ではIoT活用による生産性向上を、営業部門ではCRMシステムの高度化を、それぞれDX推進の文脈で位置づけ、相互の関連性を理解しながら推進できます。また、定量的な指標を用いることで、抽象的に捉えてしまいがちなDXの取り組みを具体的な数値目標として示すことが可能です。
これにより、組織メンバー全員が目指すべき方向性を明確に把握し、自身の役割や責任を認識しながら、積極的にDX推進に参画する環境が整います。組織全体での共通認識は、DX推進の基盤となり、変革への取り組みを加速させる原動力となるでしょう。



取り組むべき課題が明確になる

DX推進指標のメリットとして、企業のデジタル化における課題を明確に特定し、優先的に取り組むべき領域を浮き彫りにする点です。企業がデジタル変革を進める際、多くの場合、どこから手をつけるべきか判断に迷うからです。
小売業のケースではDX推進指標による評価により、顧客データの活用度が低い点や在庫管理システムの老朽化、デジタルマーケティングのスキル不足など、具体的な弱点が浮かびあがります。数多くの課題の発見により、顧客データ分析基盤の構築、在庫管理システムの刷新、デジタルマーケティング人材の育成など、具体的なアクションプランが策定できるのです。
そのため、DX推進指標は組織の強みと弱みのバランスを把握し、戦略的な改善計画の立案に役立ちます。ただし、実効性のあるDX推進には、現状の正確な把握と課題の優先順位づけが重要視される点は理解しておきましょう。



施策の進捗管理や評価に繋げられる

DX推進指標を用いるメリットとして、組織のデジタル変革における施策の進捗状況を管理、評価できる点があげられます。数値化された指標を用いることで、施策の効果を定量的に把握し、迅速な改善活動につなげられるためです。一例として、製造業における生産ラインのデジタル化プロジェクトでは、DX推進指標を活用して自動化率やデータ活用度を定期的に測定します。
生産設備へのIoTセンサー導入率や収集データの分析精度、予知保全システムの活用状況などを段階的に評価し、各施策の効果を具体的な数値として把握します。また、DX推進指標による評価は、経営層への報告や部門間での進捗共有にも有効です。
このように、DX推進指標を上手に活用すれば、組織のデジタル変革を着実に前進させるための実践的な管理・評価ツールとして機能できます。



KPIの設定がしやすくなる

DX推進指標を用いれば、重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)の効果的な設定が可能です。DX推進指標が提供する体系的な評価フレームワークにより、組織は具体的で測定可能な目標値を設定し、デジタル変革の進捗を正確に追跡できるからです。
製造業における生産プロセスのデジタル化では、設備稼働率や品質管理データの分析精度、予防保全の成功率など、具体的なKPIを設定します。これらの指標は、DX推進指標が示す成熟度レベルに基づいて段階的に向上させる目標値として活用されます。
さらに、DX推進指標は経営戦略からIT基盤まで複数の評価項目があるため、多角的な視点からKPIを設定すれば、バランスの取れた目標管理が可能です。したがって、DX推進指標に基づくKPI設定は、組織のデジタル変革を確実に推進するための基盤といえます。



DX推進指標をもとにしたDX推進方法のポイント

DX推進指標を用いて、組織の変革を成功に導くには、体系的なアプローチが欠かせません。ここでは、DX推進指標を実践的に活用するための5つの重要なポイントを解説します。



DX推進指標のガイダンスの内容を理解する

DX推進指標のガイダンスは、組織のデジタル変革における羅針盤です。経済産業省が公開している本ガイダンスには、デジタル経営の在り方から具体的な評価基準まで、包括的な指針が示されています。ガイダンスの理解なしには、現状把握や効果的な改善策の立案は望めません。
製造業のある企業では、ガイダンスの理解不足により、デジタル投資の優先順位づけを誤り、期待した成果は得られませんでした。以上からもわかるとおり、組織変革の第一歩は、DX推進指標ガイダンスの理解から始まるといっても過言ではありません。



現状確認を行う

組織のDX推進を成功に導くには、現状の正確な把握が不可欠です。DX推進指標を用いた現状分析により、組織のデジタル成熟度や課題が明確になり、効果的な改善策の立案ができるからです。なお、現状確認の際は、経営戦略や組織体制、業務プロセス、システム基盤など、多角的な視点からの評価が求められます。
金融業界のある企業は、DX推進指標による現状分析で顧客データの活用不足、デジタル人材の不足などの課題を特定しました。また、部門間での認識のずれを防ぐため、評価基準の統一と客観的なデータに基づく分析も不可欠です。現状確認の結果は、具体的な数値やエビデンスとともに文書化し、組織全体で共有しておくとよいでしょう。



目標設定を行う

組織の目標設定は、DX推進指標の評価結果に基づいて具体的な数値目標と達成時期を明確化しなければなりません。明確な目標がなければ、組織全体の方向性が定まらず、効果的なデジタル変革の実現は困難です。
目標設定では、短期・中期・長期の時間軸に沿って、段階的な到達点を設定します。なお、目標値の設定には、業界動向や競合他社の状況、自社の経営資源などを総合的に考慮し、実現可能かつ挑戦的な水準の設定が推奨されています。



戦略立案を立てる

戦略立案では、現状分析で特定した課題と設定した目標を結びつけ、実行可能な計画へと落とし込みます。具体的な計画としては、デジタル技術の活用方針、必要な投資計画、人材育成施策など、複数の観点から包括的なアプローチを検討するのが基本です。
サービス業界のある企業は、顧客接点のデジタル化を最優先課題として特定し、3年間でのオムニチャネル体制構築に向けた詳細な戦略を策定しました。また、戦略の実効性を高めるため、部門横断的なプロジェクトチームを編成し、定期的な進捗確認と戦略の見直しをおこないます。
この際、外部環境の変化や新たな技術トレンドにも柔軟に対応し、戦略の修正を躊躇しない姿勢が求められます。



適切な組織体制のプロセスを確立する

DX推進の成功には、適切な組織体制の構築が重要な鍵を握ります。組織体制の整備は、デジタル変革を推進する基盤として、部門間の連携強化とスピーディな意思決定を実現するために不可欠な要素です。小売業界の大手企業では、DX推進部門を新設し、各事業部門との連携役として専任のデジタル推進リーダーを配置しました。
これにより、全社的なデジタル施策の展開がスムーズになり、導入から数か月で業務効率が飛躍的に向上する成果をあげました。このように、組織体制の構築では経営層のコミットメント、明確な権限委譲、人材育成プログラムの整備が必要です。これらの要素を組み合わせることで、持続的なDX推進が実現します。



まとめ

本記事では、DX推進指標の基本概念から具体的な活用方法まで、多角的に解説しました。DX推進指標は組織のデジタル成熟度を可視化し、効果的な変革を実現するための重要なツールです。DX推進に悩みを抱える企業や実務担当者は、今回の記事を参考に、DX推進指標を効果的に活用しましょう。